子どもの頃、風邪をひいたとき、母が花梨と蜂蜜の暖かい飲み物(お茶と呼ぶのだろう)を作ってくれたものだった。その後長いこと花梨のことは忘れていた。この地に引っ越してきてから、ボニーさんのうちで見事なクインスの木と大量に実った果実を見て、香りをかぎ、花梨のお茶が素晴らしく美味しかったことを思い出した。クインスでお茶を作ると、私の中では記憶の中の花梨のお茶の味と香りにぴったり重なる。
それで、うちではクインスの木を何年か前に植えた。とても強くて大きくなる木であるし、交配させる必要もなく、またお茶を飲むためだけのつもりだったので、斜面の収穫しにくい(手が届きにくい)場所に一本だけ植えた。次女が今年は一つか二つ実をつけたと言っているが、まだしっかり見ていない。
しかし、今週ボニーさんのうちに行った妻と子供が、物々交換でたくさんのクインスを持ち帰ってきた。
これはお茶では消費しきれないので、定番らしいクインスジェリーを作った。私にとっては初めての試みだ。
レシピを飛ばし読みして夜中に作業したので、後で考えるとおかしなこともしたが、とにかく素材が強いので、素晴らしい味になった。酸味の具合と香りがとても良くて、私はリンゴを素材としたものよりずっと美味しいと思う。
クインスはペクチンが多い果実なので、改めて加えない。レモンの皮を加えて水で煮込み、ザルでこす。そして砂糖を加え、レモンの果汁を絞って、煮詰めて水を飛ばし、いろいろな容器で固まるのを待つだけだ。
クインスの皮を剥き、芯を取ってから調理する人は、ザルでこす作業も必要無い様だ。砂糖は、私はクインスの重さの6~7割程度入れたが、クインスの重さと同量程度入れるのがスタンダードのレシピのようだ。煮詰め方によって、冷やして固めたときに羊羹のようになったり、ジャムのようになったりするようだ。
果物はたいていどれも好きだが、ここでおそらく最も生産・消費されているリンゴ、ペア、プラム、イチゴといったものより、私はこのクインスとマルベリーが特に好きなようだ。この二つは、ちょうどありがたいことに他の果樹よりも強くて育てやすいと言われている。