うちの野菜畑の成り立ち
ここに引っ越してきたとき、野菜用と思われるベッドが家のデッキから見下ろしたところに数畝あった。とても乾く場所で、前の住人は何も栽培していなかったようだった。私も最初そこで野菜作りを試みたが、週に何度か水をやっても野菜に必要な湿り気をなかなか保てない為、そこは普通の野菜向きの場所では無いと判断した。うちでは井戸の水を節約することが重要だし、出来るだけ適材適所の庭造りをしたいと考えたからだ。そこは暫くペレニアルフラワーの苗を作る場所にしていたが、今は渇きに強いハーブ(カモミール、フェネル、ローズマリーなど)や宿根草野菜(ニラなど)の栽培に移行させつつある。
食糧生産の場として代わりに目を付けたのが、家の裏にある湿地近くのエリアだ(上の写真)。そこは、何の利用もされていなかったものの、木が生えていない空き地となっていて、背の高いイネ科の植物にびっしりと覆われていた。斜面のすぐ上が沼地になっていて、雨期の間は沼から溢れ出た水や湧き水が地表を流れていた。
つまり、そこには地中に水が比較的豊富にあると思われたし、木を伐採する必要もなく、またうちの中では陽当たりが良い場所だった。
栽培を始める前に、私はそこを、夏の乾期に湿気が保たれ、かつ雨期に水が滞留しない場所にする必要があると考えた。当初は今より果樹を中心に考えていた(今は、果樹は他の場所にも分散した)ので、雨期の水はけも今以上に重視していたのだ。
そこで、庭師(というよりは友人)のジョンと相談して、 夏に水を地中に貯蔵し、冬の雨期には水をエリアから排出する仕組みを作ることにした。
まず、空き地の中に、等高線の方向で3本の溝を堀った。幅が90センチ程度で深さが1メートル20センチくらいの溝だ。雨期になると、地表の水がそれらの溝に落ちる。溝の底40センチくらいはガーデンクロスで包んだ大粒の砂利で埋めて、水が砂利の合間を自由に流れるようにした。水量がその砂利を越えると、オーバーフローが排出用の溝に出て行き、エリアからは過剰の水が排出される。そして、溝の中の砂利の上は、朽ちた木や枝を拾い集めてそれらで埋めた(オーバーフロー排出用の溝も同様だ)。これらの朽ちた木がスポンジの役割を果たし、雨水を果樹や畑の為に貯蔵してくれるだろうと考えたのだ。
上の2本の溝が雨期の過剰な水を排出してくれるだろうと期待した場所には、果樹を植え込んだ。そして、3本目の溝の真上とその下の段は、木枠で囲った野菜畑とした。
このデザインは、思惑通り機能しているように見える。果樹には、雨期の過剰な水で根腐れを起こしたものは出ていない。そして、夏の間も、果樹を植えた当初忙しくてろくな水やりはできなかったのだが、水不足の気配を示すことなく、順調に成長して、その後果実も実らせるようになってきている(陽当たりの方が制約要因のようだが)。一番下に配置した野菜畑も、保水性は悪くない。
問題があるかと言えば、 溝の真上に作った野菜畑や、溝の真上に植えたフキの畝が、毎年少し沈んだり、局所的に穴が空いて土が落ちてゆくことだろう。毎年土を足してやる必要がある。朽ちた木で溝を埋めてから畑の土を載せたのだが、埋めた木の間に隙間がたくさんあるからだ。
さて、この春は、秋に始めた野菜畑拡張の仕事を再開する予定だ。このエリアの奥の方から、秋に果樹を何本か掘り起こし、他所へ移した。そこを野菜畑に変え、葉物だけではなくて比較的陽当たりが必要な野菜も試みるつもりだ。もういくらか有機物を入れたり、鹿柵を拡張したり、木枠のベッドをいくつか導入したりと春の仕事が待っている。