島の進歩主義と保守主義
バンクーバー島の田舎であるカウチンバレーの人々のメンタリティは、私が東京やシカゴで経験してきたものとは結構違う。一方で極めて進歩主義的な面があり、それで知られている場所なのだが、もう一方で、おそらくブリティシュコロンビアの田舎らしく、またおそらくイギリスの伝統とも関連して、保守主義的な面がとても強い。両極のミックスなのだ。
気候変動とか環境保護といったテーマになると、パブリックは盛り上がり、多くの人を雇う開発プロジェクトでもとん挫させる。レーシングサーキット開発にかかる公聴会など、2日目も明け方近くまで一般の人が列をなして発言しつづけたようだ。森林保護のようなテーマでも、パブリックの強い声が、市議会議員の態度を一年間でひっくり返した。
一方で、特にパブリックの風にさらされないような組織内部に入ると、そこでは「空気読め」の圧力が高いことが多い。伝統・組織維持に寄与する行動が無言の下で奨励される。ご年配の白人が支配する中枢において情報が裏でのみやりとりされ、マイノリティや進歩的な意見を持つ少数ははじき出されたりする。
カウチンバレーでは、そもそも両極に相当しがちなグループの人口比率が、他のコミュニティより高いのだろう。一方で、自然に親しむライフスタイルの為に住み着く人がたくさんいる。かたや、伝統的な産業(林業、土建業)に従事する人と公的機関の雇用に心地よく安住する人が多い産業構造で、これらにおいては島以外に人生で一度も住んだことが無い人が多い。また、高齢の白人比率が大変高い。
フリーランスの妻は、いろいろな組織に雇われてコミュニティアートプロジェクトを企画実行するが、あまりやりがいのない相手との付き合いはほどほどにして、良いものがやりやすい場所に努力を集中して欲しいものだ。古い体質で変化の兆候がない場所では、わざわざボードメンバーまで引き受けて新しいことをやろうとしても、いいとこどりだけをされて中身は伴わず、支払いも渋く、疲弊するだけだ。組織維持のために、違法行為にまで当事者の一人に加えられそうになるなんて、心の傷になってしまう。
正義感は立派だが、もう少し楽な道を選んで欲しいものだ。