うちでは、まだ果樹は生産を始めた程度だが、森の合間に大きなブラックベリーのブッシュがあったり、畑でカブが一度にできすぎたりするから、保存のために瓶詰めをしてきている。瓶を煮沸消毒して熱い中身を注ぎ、室温で放置することで中の空気が収縮し密閉される瓶詰めは、こちらへ来てから教えてもらい、うちの日常の中に浸透した。
ここらで最も瓶詰めされるのは、果物のジェリーやジャム、野菜のピクルス、トマトのソースだと思う。
日本にいたときに、瓶詰め作業が日常の中になかったのはなぜだろうとふと考えたが、理由に思い当たるのは難しくなかった。子どもの頃に身近に実っていた果実を考えると、瓶詰めの必要はなかった。まず梅は、梅干しという素晴らしい保存方法があった。柿は、時間が経過して柔らかくなってきてもおいしく食べることができた。みかんは、木に生ったままにして長いこと保存できた。ビワは保存方はちょっと分からないが、梅、柿、みかんほど重要な果物ではなかったように思う。それから、ごはんがメインの食事のときに、パンやチーズにジェリーやジャムを載せる機会は比較的少なかった。
野菜も、塩漬けが最も基本だったし、米酢はピクルスには最適でなかったと思う。トマトの用途と消費はおそらくこちらでより限定されていたから、家庭菜園での生産も多くなかったと思う。
そんなことで、瓶詰めは、私たちにとっては、こちらの環境に来てから初めて重要になった。
果物のジェリーやジャムの瓶詰めは、日本へのお土産でとても喜んでもらえていると思うのだが、妻は125グラムの小さな瓶に小分けして、日本からのお客さんに渡したり帰国の際に持参したりしている。最初喜んでいただけても、すぐ忘れられて、冷蔵庫のスペースを取るものになりやすいから、小さい方がありがたがられるのだそうだ。また、スーツケースを重くせずにいくつも持てるのも便利だ。