メープルマウンテン日記

メープルマウンテン日記

森のガーデニング、食べ物の栽培・採集やバンクーバー島での田舎生活など。

防火対策と森林保護区

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家の裏の森林保護区

背景がやや複雑なので、少しだけ長めの話になってしまいそうだ。

私の住む場所はノースカウチンという自治体の中であり、ノースカウチンは6つの森林保護区を所有している。メープルマウンテンはその一つだ。いくつかの森林保護区はレクリエーションや観光誘致に積極的に利用されていて、メープルマウンテンでは大きなマウンテンバイクのレースも行われる。町では、管理費用を捻出するため、森林保護区の何パーセントかを毎年伐採し、原木を売却する。伐採は完伐(クリアカット)方式であり、その跡地にはすべて市場性の高い針葉樹を植林するため、山の多くの部分は自然の姿というよりは人工林に見える。

この管理方式は、雇用も産み、税負担にもつながらず、支持層もあるが、一方で、批判もある。針葉樹林に偏っているため森の保水性が低い、山火事が大きくなりやすい、生物の多様性を損なうといった批判だ。伐採方法についても、完伐跡に外来植物がはびこる、地肌が露出している間に斜面の浸食が進むし、直接の陽ざしで地面から水分が失われて山火事の危険も増すとされる。また、大風で倒れたり、火事で焼けたり、枯れた木を、機械で除去する実務についても、地面で腐らせて土を肥えさせるべきだとの指摘もある。

アイセルさんは、既得権益のあるこの分野で、時に批判にあいながら、新しい管理方式に移行することを提案し、運動を組織化してきた方だと理解している。この一年で、町議会議員の態度は大きく変わり、実際に、新しい管理方式へ移行することを目指して、ブリティシュコロンビア大学のチームによるコンサルティングも始まる。生物多様性、保水、防火、観光資源としての価値向上などが強調されるようだ。新しい方式の下での管理費用の捻出には、カーボンクレジットの売却が模索されるようだ。伐採は必ずしもやめるとは約束されていないが、伐採方式は再検討するようだ。

ここからが今日の本題だ。

私は森林保護区に関する町議会審議や公聴会には、傍聴者が少ないものも含めて出来る範囲で参加してきたので、アイセルさんとはお互いに顔見知りだ。彼女の貢献とその成果はありがたいし、また尊敬もしている。 しかし、ハイキングに一緒に行こうとの再三の誘いには、応じる勇気が出なかった。これまでの管理をしてきた役場の担当者にお世話になっているとか、親しい友人の夫が伐採の仕事をしているとかは、別の話であり、ためらう理由ではない。私には、自然保護活動をしている人たちへのいくばくかの恐怖症があるのだと思う。

この恐れる気持ちは、二つに分けられるのだと思う。一つめは、自分の進めている防火対策に反対をされるのではという懸念だ。私は、新しい森林管理の方向性には賛成だが、住宅の周辺だけには「手つかずの森を作る」ことの例外があるべきだと思っている。ブリティシュコロンビア州の、住居の防火対策のマニュアルからは、多くを学ばせてもらったが、住居から100メートル以内については、可燃物を減らすことが強く推奨されている。うちの場合、この円には、広い森林保護区のエリアが含まれる。昨年から、役場の担当者とコミュニケーションを取りながら、ここの可燃物処理を行ってきた。森は手つかずにした方が、有機物が蓄積して保水力が向上し、長期的には火事の防止につながるという説明には、説得力があると思う。しかし、住居の近くでは、短期的に、今年起こるかも知れない火事での延焼防止を重視したい。そういった目先重視の行動を理解してもらえるのだろうか。

二つ目は、自然保護活動に時について回るように見える、原理主義への漠然とした恐れだと思う。私は、火事対策の為の可燃物(主に、針葉樹が固まっているところでの下枝や、地面の枯枝・燃えやすい低木など)処理として、焼却をしている。これには、燃やすことにはとにかく必ず反対する人達の目が光る。私だって、有機物を利用するタイプの処理ができれば一番良いし、かつてはウッドチップにして敷き詰めていた。しかし、ウッドチップは燃えやすい。また、埋めてくれるところへ持ってゆくには、一つ300ドルくらいでコンテナを借りて引き取ってもらうのだが、試してみたところ、2時間で燃やせる枝の山を、コンテナにたくさん入るように小さくして積み込むのに、2日かかった。さらに、コンテナを設置できる場所まで森の中から枝を運んでくるのも大変だ。ここはプラグマティックに燃やす処理を続けさせてもらわなければ困る。こういった現実的なことに理解を示してもらえるのだろうか。

でも、昨日今日考えた。アイセルさんも、彼女と一緒に活動している様子のポリーナさんも、ロジカルだし、現実にも理解のありそうな方に見える。近々、ハイキングに連れて行ってもらおう。そして、正直でオープンな議論をしてみよう。